三菱総合研究所は、ポリマー設計エキスパートシステム(EXPOD)を開発しました。
新しい高分子化合物(ポリマー)の開発には莫大な文献の調査と候補に上がったポリマーの合成の実験とで、莫大な時間と工数が必要です。そのため、従来よりポリマー設計、開発の工数の削減が望まれていました。EXPODは、線状ほもポリマー設計者のために考えられた たエキスパートシステムです。EXPODにより次のことが可能になりました。
EXPODは、UNIX上で動作し、イフコンピュータ株式会社より提供された最新の知識工学技術を使用しています。
EXPODは、1986年より三菱総合研究所を中心に40社以上で開発プロジェクトで設け、開発されました。今日では日本国内で50社以上の会社がEXPODを使用しています。
EXPODの構成は従来のエキスパートシステムの構成を踏襲していますが、大いに拡張もされています。EXPODは、Xウィンドウを採用しユーザーフレンドリーなインタフェイスとして、マウス技術をフルに活用しました。 一例として、ユーザーはポリマーモデリング中に、マウスをクリックするだけで他のウィンドウにある化学式を選択し、モデリング中の分子団に付け加えることができます。
EXPODエンジンには次の3点の主要機能があります。
化学構造よりポリマーの特性を推算する。
要求特性より候補となる分子構造を生成する逆推算をする。(オプション機能)
EXPODの推算方法として使用するパラメータ群をユーザーに合わせて編集、最適化をする。
EXPODの知識ベースに加え、データベースも編集、拡張することができます。データベースには2400の既知のポリマー、4500の構造、これらをカバーする80,000項目のデータが格納されています。基本システムには13の基本特性に関する情報が盛り込まれていますが、各ユーザーはユーザー特有の特性データをこれに付け加えることができます。 知識ベースは基本特性用の53の推算用の半代数規則を有し、化学構造および特性に関する130の知識項目を有する。
EXPODでは、共通のデータベースと、それとは別のユーザー特有のデータベースと知識ベースを使用することができます。
EXPODを使用して推算をする際には、次の順序に従います。
まず、ポリマー設計者はデータベースを使って、ある特定のポリマーグループをサーチすることができます。EXPODのデータベースに格納されたすべてのポリマー、その構造、その特性を調べることができます。
設計のより具体的な段階に至った場合には、対話型のグラフィックポリマーモデラーを呼びだし、ポリマーの構造の繰り返し単位を作ります。EXPODでは、それぞれ別のウィンドウに個々の部品、原子団などのコンポーネントのライブラリを提供しており、マウスをクリックするだけで、それを取り出すことができます。モデラーは、実際にモデリングしたポリマーを登録する前に、それが化学的に可能かどうかをチェックする能力を持っています。
この手順の後に、設計者はモデリングしたポリマーの分子構造(分類、平均分子量、タクティシティ)を決め、そのポリマーの名称を付けます。
ここで、モデリングしたポリマーの特性を推算します。まず調べたい特性を選択し、かつ、どの推算方法を使用するのかを選択します。共通のデータベースには、すでに科学的に認められたいくつかの推算方法があらかじめロードされています。ユーザーはこれらの方法をチューニングしたり、他の方法を付け加えたりすることができます。EXPODは、何か入力パラメータが必要であるかをチェックします。 そして必要な場合には、ユーザーに対して、入力を行なうよう指示します。
この状態で、推算準備完了状態です。EXPODは、データベースと知識ベースにより、要求特性の値を計算します。結果は表形式で別のウィンドウ上に示されます。
逆推算モジュール(オプション販売)により、要求特性あるいはリードポリマーを設定すれば、候補となるポリマーを探索することができます。
第1に、候補ポリマーが持つべき特性を特定します。候補ポリマーが持つべき種類の構造を参照のために、リードポリマーとしてあらかじめ入力しておくことも可能です。サーチの焦点を絞るために、リードポリマーのどの原子団を変更しないかを特定することも可能です。
逆推算モジュールは、繰り返し化学構造を作りだし、評価します。この化学構造の特性は、EXPODの標準推算部分により推算され、要求特性と比較されます。もしこの特性が、要求特性に近いものでない場合、逆推算モジュールは再び、より良い構造を作ろうと試みます。このサイクルは何度も繰り返され、毎回その前のサイクルよりも良い結果が出され、最終的な候補が出力されます。
候補ポリマー探索の具体例を次に挙げます。
EXPODの知識ベースには、ポリマー特性を算出する数学式が格納されています。この数式には、EXPODの共通データベースにロードされた経験的なポリマーデータに基づくパラメータを使用しています。
しかし、もしユーザーがユーザー独自の経験結果を考慮に入れて、EXPODを使用したいのであれば、パラメータ最適化モジュール(オプション販売)を使用して、これを行なうことができる。このモジュールを使用することにより、EXPOD~のパラメータ群をユーザー独自のものとすることができる。
非線形最小二乗法を使用すれば、このパラメータ最適化モジュールは推算データと、ユーザーが入力した実験データを比較します。 この結果最適化されたパラメータは今までの推算データに置き換わり、EXPODの推算式のベースになります。 最適化によりEXPODの推算の精度は次の図が示すように著しく向上します。
第1図は結晶密度推算則を使った推算値を示していますが、上の図は最適化する前、下の図はした後の値を示しています。
EXPODのもう一つの重要な機能に新しく得られた知識や実験結果の管理があります。もちろん、EXPODにはかなりの量のポリマーデータがロードされていますが、EXPODの真価は共通データベースを個々の会社の独自の知識でもって拡張する潜在能力を持っているところにあります。
一般に、新しいポリマーの設計は一人の研究者ではなく、複数の研究者のチームで行なわれます。それゆえに開発効率を上げ、効果的にポリマーに関する知識を活用するために情報を共有することが望ましいと考えられます。もし一人の研究者がEXPODに新しい知識と実験データを記憶させたら、チーム全体がすぐにこの知識にアクセスすることができます。さらに、これによりこの研究者の知識は永遠に保存され、将来に渡って使用可能となります。
EXPODにより、共通のポリマーデータ、ユーザー独自のポリマーデータを広範囲に渡って管理することが可能です。各研究者は個々のデータベースを作ることができるので、後になって、結果が変更された時には、その内容を共通データプールに加えることができます。
EXPODではチューニングをすることも可能です。例えば、ポリカーボネートを専門とする会社では、他のポリマーに関するデータをすべて廃棄し、ポリカーボネートのみに関する推算の精度を上げることができます。
EXPODは3,100の既知のポリマーに関する110,000の項目をカバーしています。ユーザーはこれ以外のポリマーを追加し、ポリマー類を指定変更することができます。
EXPODは13の基本化学特性に関する評価方法を提供しています。ユーザーは他の化学特性をカバーする独自の方法でEXPODの知識ベースを拡張することができます。
密度 熱膨張係数 ガラス転移温度 融解温度 融解熱 熱容量 容解度パラメータ 表面張力 ガス透過性 屈折率 光弾性定数 誘電率 結晶化 ユーザー特有の他の特性
EXPOD プロジェクトは、ポリマー設計の効率化、および広範囲に渡るデータとノウハウ管理を目的に、1986年三菱総合研究所により始められました。40社の日本国内の化学メーカーがこのプロジェクトに興味を持ち、1989年には、EXPODプロジェクトが発足しました。
プロジェクトでは、日本に主要なポリマーメーカーである三菱化成株式会社、昭和電工株式会社、住友化学株式会社、東レ株式会社の協力を得ました。40社以上がこのプロジェクトに貢献し、現在50社以上がEXPODを使用しています。
EXPODのユーザーインタフェイスと資料は日本語と英語のものがあります。
ソースコード: IF/Prolog, C言語 Xウィンドウ使用 グラフィックユーザーインタフェイス使用
32Mバイトメインメモリ 100メガバイトハードディスクスペース(EXPOD用)と32メガバイトスワップエリア ビットマップディスプレイ カートリッジテープドライブ
Sun SPARC (OX 4.1) Sony RISC (News OS 4.0) HP9000/400 (OS 7.0)
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